The Spiral
【★★★★★】
変則的な構成を持つ名曲。
加えて、総評(GREEN - うるさいほどの静けさ)にも書いた通り、ポップ路線のこのアルバムの中に限らず、B'zの曲の中で言及しても極めて異質な曲でもある。
ピアノとアコギを使った静かなパートと、それにバンドサウンドを被せてくる激しいメインパートの2種類が交互に演奏されるという変則的な曲構成。
B'zの他の楽曲で言えば『Calling』や『Man Of The Match』等に2種類の相反するパートが使われているが、それが交互に使われるとなると挙がってくるのはこの曲しかない。
加えて、先に挙げたような特徴を持つ曲の中で、1曲通してこれだけ暗さを持ち合わせている曲はこの曲以外には見られない。
『GREEN』にこの曲をあえて混ぜた、というのは『Brotherhood』、『ELEVEN』路線からのポップ路線への単純な方向転換ではないんだぜ、ということを主張する意図も幾分かあるのではないかと個人的に考えている。
恐らく初めてこの曲を聴いた人の殆どが頭に「?」マークを浮かべるだろう。
いきなり曲が盛り上がって、静かになったかと思えばまたすぐに盛り上がる。なんだかよく分からないうちに曲が終わっちゃった、という感じ。
基本的には静パート①→メインパート→静パート②の繰り返し。
『The 7th Blues』収録の『Sweet Lil' Devil』においても似たような構成が見られた。
それに沿って考えると、「メインパート~静パート②」までを1つのサビと考えるのが自然ではないだろうか。
これが3回繰り返されたあとは、あとは静パートのみ。最後はアカペラで締めくくられる。
以上のような変則的な曲構成。静パート②でのメロディラインは印象に残るが、全体として見るとメロディーはさほど起伏がない。
なのに何度も聴いているうちに曲が頭から離れなくなる。中毒性があるのだ。
レビューで曲の魅力を「中毒性」の一言で済ませてしまうのはいささか短絡的だとは思うが、これ以上の説明のしようもない。後は聴き手がこの曲をどう受け取るか、ということになる。
歌詞におけるこの曲のテーマは「悪循環からの脱出」。
かつて夢見た「ラフなドリーム」とはかけ離れた、切羽詰まった日々の生活(=悪循環)から抜け出せずにいる主人公。
それから脱出するための稲葉浩志の答えは、
「気持ちひとつで今日が決まるかも」。
冒頭2行目の主人公のように、日常の些細なことにいらついてても悪循環からは抜け出せない。
気持ちをプラスの方向に持っていくキッカケは何でもいい。
ビル群から垣間見える月にうっとりするようなことでもいい。
日常のなかで自分の気持ちを変える要素を一つでも見つけること、それが悪循環から「光るスパイラル」へと変えるための方法だということである。
以上のように歌詞は完成度の高い、稲葉浩志の王道ともいえるテーマで描かれたものだ。
サウンドと歌詞が相まって、一般的に爽やかなポップアルバムとして知られている『GREEN』から、B'z史で唯一無二の楽曲が誕生したのでした。ハラショー。
ちなみにWikipediaによると、「おひさまがギラついて アスファルトが熱を放ち」はヒートアイランド現象、「やばい時計」は世界終末時計を表しているようだ。
この曲を聴いて間もないときは「やばい時計」って時間までに起きなかったらなにかやばいことが起きる目覚まし時計か何かかと思ってました。