闇の雨
評価:★★★★☆
今アルバムの「影」の部分を象徴するかのような曲調と物語。
Disc1の4曲目。
元々は『Mannequin Village』と同じ曲だったのだが、暗いメロディーとロックサウンドを分けたことで別の曲ということに落ち着いた。
TAKこと松本孝弘の得意とする「泣き」の感情表現、一般に言われる「泣きのギター」というものをこの曲では全編に渡って堪能することが出来る。
イントロのソロから既にそれは現れる。
かつて、いやB'zの楽曲内でこれほどまでに悲しい、哀愁、という言葉では言い表せない「泣き」の感情を聴くことがあったであろうか。
『紅い陽炎』をも上回る泣きのギター。それはサビ前でも一気に私達の感情を揺さぶる。
一方で間奏のソロからラストサビにかけては少しばかり明るい。これについては後述する。
そして元の暗い曲調に戻り稲葉のボーカルとTAKのギターでフェードアウト。
この曲の最も注目すべき点は、歌詞をこの曲構成と曲調に見事に一致させていること。
当時離婚したばかりの稲葉浩志。本人の中にある「影」の部分をこのアルバムで出し切った、というべきだろうか。
ここで私の歌詞解釈を述べさせて頂く。
「きみはひとり 車拾い シートに体をあずけ 静かに息をついてる」
より、女から別れ話を告げられた男視点の話だと分かる。
「今日まで 傷つけた人のことなど 思わない」
「待たされる人の気持ちがわかるから はやく行こう」
2人が傷つけた人。女に待たされた人。それを女の本当の男ないし家族と考えると、
「長い闇を走り抜け あなたにもうすぐ会える
かたい約束かわした ふたりひとつになれるの」
「なにもかも捨てられると 涙見せてくれたから」
「心配することはないと 強く抱いてくれたから」
そう、不倫である。女の方も相当男に身を寄せていた様子が伺える。
「忙しく歩くスーツたちも 恋をしているのだろう」
と、男は他人も不倫しているに違いないと考えることで自分を正当化するほどに強い思いを持っている。
しかし女は自分の家庭へと戻っていく決心をする。
それは一時的な嘘だと信じている主人公。彼女を信じている気持ちが伺える部分の歌詞の位置は、丁度明るくなるラストサビと一致しているのだ。
しかし再び暗いサウンドへと戻っていく。
「待ってるはず 闇の向こうに あなたはいるはず…」
主人公と強い結びつきを持っていた女の、主人公と別れるという決心は決して柔いものではない筈である。
果たして闇の向こうに「あなた」はいたのだろうか。言わずもがなの結果だろう。
不倫に溺れた主人公の悲しい終末だ。
ここまでB'zの2人の仕事が神憑り的に噛み合っている曲は稀有である。
なのにも関わらず私がこの曲に★5評価を付けられないのには理由がある。
私がこの曲を★5評価にするにはあまりにも暗く、重すぎるのだ。
そういう自分勝手な理由でこの曲を心から好きになれない自分がいるんです。許して。